診療報酬改定、患者行動のオンライン化、地域包括ケアの進行により、クリニック経営はかつてない難易度に突入しました。以前は駅前立地と看板で十分だった地域医療も、いまやGoogle マップの上位表示（MEO）と口コミ管理を抜きに語れません。本稿では、先の基礎ガイド​​集客 クリニックを踏まえつつ、

1. 施策効果の高い順ベスト５
2. コスパの高い順ベスト５

をすべて実例付きで深掘りし、「明日から使える運用シナリオ」を提示します。

1. 施策を機能させる5つの大前提

クリニックの集客施策を成功させるには、広告やSNSの前に「土台」を整えることが重要です。以下の5点が最低限の前提条件です。

1. 医療広告ガイドラインを守る

• 禁止表現チェックリストを院内フォルダーに常設
• ビフォーアフター写真を使う場合は副作用・稀な合併症も明記し、誇大表現を避ける

2. E-E-A-T（専門性・権威性・信頼性・経験）の可視化

• 医師の資格や学会所属を公式サイトとSNSに掲載
• 機器導入時は、メーカー提供の臨床データをPDF公開

3. スタッフが運用を担える体制をつくる

• 毎日15分間の「更新タイム」を設け、写真投稿や口コミ返信を習慣化
• SNS当番を週替わり制で担当し、業務負担を平準化

4. ペルソナ設計と地域特性の明文化

• ターゲット層（例：30代共働き世帯、50代の生活習慣病層）を明文化
• ペルソナごとに検索キーワード、主戦場SNS、口コミの重視度を整理

5. KPIとダッシュボードでの定量管理

• Looker Studioなどで「新患数」「再来率」「口コミ件数」「LINE登録数」などを可視化
• 毎週15分のKPIミーティングで改善アクションを即決

2. 施策効果の高い順ベスト5【実例付き】

1位：Google MEO強化と口コミ運用（都市部K耳鼻科）

• プロフィール文章を750文字に刷新し、主要診療内容を冒頭に記載
• 医療事務が毎週写真を投稿、口コミ返信は3時間以内に実施
• 「鼻炎＋駅名」検索でマップ1位を獲得、新患が週40件増加

2位：症状特化SEOとランディングページ（郊外S整形外科）

• 「60代女性・膝痛」向けLPを作成し、H1に「膝痛専門外来」表記
• 理学療法士監修の動画を埋め込み、FAQを充実
• 検索順位3位に上昇、手術相談数1.5倍

3位：Web予約 × 問診 × LINEリマインド（駅前M内科）

• ファーストビューに予約ボタンを設置
• 問診を事前入力形式にし、カルテと自動連携
• LINEで前日18時にリマインド配信、受付時間が平均5分短縮

4位：Instagram／YouTubeハイブリッド（美容皮膚科L）

• Instagramで週3回リール投稿、医師が60秒解説
• YouTubeでは看護師が月2本の解説動画を投稿
• DM相談からWeb予約誘導、6ヶ月で新患数30%増

5位：地域連携セミナーと院内イベント（小児科Y）

• 小学校3校と連携し「小児ぜんそく講座」を開催
• 管理栄養士によるレシピ実演とLINE配信
• 未受診世帯の3割が初診予約に転換

3. コスパの高い順ベスト5【実例付き】

1位：Googleビジネスプロフィールの整備

• 診療時間や休診情報を即更新
• 専門外来名をサービス欄に明記
• 無料360°写真や順番待ち状況の投稿を活用

2位：口コミ返信テンプレートと自動アラート

• ポジティブ・ネガティブ用に2種類の返信文を用意
• 新着口コミ通知を院長と事務長が即チェック可能に設定

3位：FAQページとブログの内製化

• 医師が外来後に3分で質問をメモ
• 医療事務が月末にFAQ化し、電話問い合わせを30％削減

4位：LINEリマインドと生活指導配信

• 予約日前日リマインドやセルフケア動画を自動配信
• 既読率が高く、無断キャンセルが大幅減

5位：受付スクリプトとロールプレイ研修

• 電話応対マニュアルを5種作成し、月1回のロールプレイで改善
• 「受付が丁寧」という口コミ増加につながる

4. 高成果施策と高コスパ施策の使い分け

高成果施策はコストも労力もかかりますが、新患数の爆発的増加やブランド認知に直結します。一方、高コスパ施策は即効性と継続性に優れ、運用体制の基盤づくりに役立ちます。

基本ステップは次の通りです：

1. 運用基盤を整える（ガイドライン順守、体制構築、KPI設定）
2. 高コスパ施策から着手（低コストで成果を体感し、運用に慣れる）
3. 高成果施策へ段階的に投資（LP制作、広告費などを適切なタイミングで投入）

この流れを踏めば、無理なく効果的な集客体制を構築できます。

5. 12か月ロードマップ

なぜ12か月ロードマップが必要なのか？

クリニックの集客力は、一夜にして劇的に向上するものではありません。基盤整備、初期集客、リピート強化といった段階を踏みながら、少しずつ“運用筋力”を育てていく必要があります。
このロードマップは、短期的な効果を狙うだけでなく、1年間をかけて運用の仕組みと成果を着実に積み上げるために設計されています。

また、集客施策は「やるべきこと」が多く見えるため、場当たり的に取り組むとリソース不足や優先順位ミスに陥りがちです。
あらかじめ12か月単位でステップを分けておくことで、「今やるべきこと」「次にやるべきこと」が明確になり、チームの行動がブレにくくなります。

月	施策内容①	施策内容②
1か月目	Googleビジネスプロフィールを更新し、星評価4.0以上を維持	口コミ返信テンプレートを作成し、スタッフチャットに固定投稿
2か月目	FAQを10件追加し、電話対応の重複を削減	LINEリマインド機能を導入し、友だち登録を促進
3か月目	症状特化型ランディングページ第1弾を公開	内部リンクでE-E-A-Tを補強
4か月目	Instagramを週3投稿で運用開始	フォロワー500名を目指す
5か月目	Web問診システムを導入し、電子カルテと連携	受付待ち時間を平均3分短縮
6か月目	院内ミニセミナーを開催	LINE配信で友だち300名増加
7か月目	YouTubeで月2本の施術解説動画を公開	視聴完了率35％を目標に設定
8か月目	企業向け健康セミナー企画書を作成	近隣企業と産業医契約を締結
9か月目	Googleリスティング広告のABテストを開始	許容CPA内で新患を獲得
10か月目	KPIダッシュボードで週次レビューを徹底	目標達成率80％を維持
11か月目	小学校保護者会とイベントを共催	初診予約を15％増加
12か月目	1年間のデータを分析	継続施策と改善計画を策定

なぜこの順番で進めるのか？

このロードマップは、次の3つのステージを意識して順番を設計しています。

1. 基盤整備フェーズ（1〜4か月目）
   まずはGoogleビジネスプロフィール、FAQ整備、LINE公式アカウントといった「低コストでできる土台作り」を優先します。
   これにより、広告費をかける前に自然流入や既存患者との接点を強化し、確実に効果が出る“受け皿”を作ります。
2. 集客拡大フェーズ（5〜8か月目）
   基盤が整ったら、Web問診やSNS動画配信、企業向けセミナーといった「新規集客チャネル」を広げていきます。
   この段階では初期投資も多少かかりますが、徐々に見込み患者とのタッチポイントが増えてきます。
3. 効果最大化・改善フェーズ（9〜12か月目）
   データが蓄積され始める9か月目以降は、広告運用テスト（ABテスト）やKPIレビュー、成功施策の横展開を通じて、さらに成果を最適化していきます。
   1年目の最後には総まとめとして、次年度に向けた「データに基づく改善計画」まで作成できる流れです。

12か月ロードマップを設ける意味は、集客の基礎固めと、成果の最大化を無理なく段階的に進めるためです。「できることから着実に」「成果を測定しながら前進」という流れを守ることで、スタッフにも無理をかけず、確実な集客体制を築くことができます。

6. 成功と失敗のケーススタディ

成功・失敗の事例を通して、何がうまくいき、何がつまずくのかを可視化することが大切です。

成功事例A：MEOと口コミで地域検索1位を獲得

• 地方の皮膚科が立地不利を乗り越え、毎週の写真投稿と即時口コミ返信でマップ検索1位を奪取。
• 新患予約が大幅に増加。

成功事例B：FAQ内製でスタッフ残業ゼロに

• 医師による毎日の質問メモをFAQに変換。電話対応が減り、スタッフの残業ゼロを実現。

失敗事例C：広告先行で費用倒れに

• LPが未整備のまま広告費を投下。CVR（コンバージョン率）が上がらず、広告費が無駄に。

7. 施策別チェックリスト

MEO

• ビジネスカテゴリは3件以上設定したか？
• 定休日や臨時休診をリアルタイムで更新しているか？

SEO／ランディングページ

• ページタイトルは35文字以内か？
• 医師監修・専門医資格のリンクを掲載しているか？

Web予約導線

• 予約ボタンをファーストビューに2か所以上設置しているか？
• 予約カレンダーを2か月先まで公開しているか？

LINE運用

• 受付と会計エリアに友だち登録用QRコードを掲示しているか？
• 自動応答メニューに「予約」「検査結果」「FAQ」があるか？

8. 明日から踏み出す5つの行動

まずは小さなアクションから。以下の5つは“明日からできる”改善施策です。

1. 今日中にGoogleビジネスプロフィールを確認し、未入力項目をゼロにする
2. 来週までに口コミ返信テンプレートを整え、誰でも即時返信できる体制を整備する
3. 今月中にFAQを10件追加し、電話問い合わせ数を10％減らす
4. 3か月以内に症状特化LPを1本公開し、自然検索からの流入を強化する
5. 半年以内に地域連携イベントを1回開催し、オンラインとオフラインの相乗効果を検証する

無料・低コストで実施できる施策で「運用筋力」をつけたうえで、データが蓄積されてから高成果施策へ投資を拡大する。
この順序を守れば、クリニックは地域にとって唯一無二の“かかりつけ医”へと進化していきます。

このガイドを参考に、まずはできることから始めてください。チームで改善サイクルを回すたびに、患者さんの安心と信頼が着実に積み上がっていきます。

---

効果的な広告運用や動画の企画・制作、SNSの運用支援などは、ぜひDAYONEへご相談ください。

---