リフォーム業界は新築需要の減少や空き家問題など、社会情勢の変化に伴ってこれまで以上に幅広い顧客層を対象にビジネスを展開できる可能性を秘めています。一方で競合も多く、価格競争に陥りやすいのが現状です。そんな中で安定した集客と持続的な成長を実現するには、オンライン施策と地域密着施策をバランスよく組み合わせ、「選ばれるリフォーム会社」としてブランドを確立することが重要です。
本ガイドでは、Webマーケティングの基礎から現場力を活かした地域アプローチ、リフォーム業界ならではのオフライン施策やスタッフ育成まで、12の章にわたって解説します。個人事業主から中規模工務店、大手ハウスメーカーの下請けまで、さまざまな事業形態に対応できる内容となっています。ぜひ、御社の状況に合わせてお役立てください。
1. リフォーム市場の現状と消費者動向
近年の日本では人口減少の影響により新築需要が横ばい〜減少傾向にある一方で、中古住宅のリノベーションや老朽化物件のメンテナンス需要が増加しています。国土交通省の調査でも、中古住宅活用を促す政策が進められ、若年世帯によるリノベーション需要や、高齢化に伴うバリアフリー化のニーズが高まっています。
消費者の購買行動も変化しており、従来の「チラシや紹介を見て問い合わせる」から、ネット検索やポータルサイトを使い、複数社から見積もりを取るのが一般的になっています。特に30〜40代のファミリー層はSNSでの事例や口コミを重視し、スマートフォンでの情報収集が中心です。こうした背景から、オンライン発信を強化し、明確な差別化とブランドイメージの確立が必要不可欠となっています。
2. ブランド力強化:リフォーム会社の差別化とUSPの設計
リフォーム業界では、価格や対応エリア、工期などが比較されがちですが、最終的な決め手は「信頼」と「安心感」です。「この会社なら任せたい」と思ってもらえるよう、独自の強み(USP:Unique Selling Proposition)を明確に打ち出すことが重要です。
コアバリューの定義
たとえば、以下のような特徴を言語化して伝えることで差別化につながります。
- 自然素材にこだわる健康リフォーム
- デザインと機能性を両立する都会的なリノベーション
- 耐震補強に強みを持つ安全施工
経営者や現場責任者の「なぜその価値観にこだわるのか」というストーリーを紐づけることで、顧客の共感を得やすくなります。
顧客セグメントとUSP
ターゲットとする顧客層によって打ち出すUSPは異なります。
- 若年層には、Instagram映えする施工事例や「暮らしのデザイン」を訴求
- 高齢者向けには、介護リフォームの実績や福祉系の専門知識・資格の紹介
セグメントごとに適した言葉と表現を選び、訴求ポイントを明確にしましょう。
一貫したブランドメッセージの発信
会社案内、ウェブサイト、チラシ、社用車のデザイン、作業着に至るまで、トーンやビジュアルを統一することで印象に残るブランドが構築できます。
- 「あなたの家を未来につなぐ」
- 「家族の笑顔をデザインする」
- 「愛犬と暮らすための住まいづくり」
このような短いキャッチコピーをSNSプロフィールや名刺にも入れておくと効果的です。
3. オンライン施策①:SEO・MEOで見込み客の検索ニーズを逃さない
リフォームを検討しているユーザーは、具体的な悩みを持って検索する傾向が強く、たとえば「キッチン リフォーム 費用」「築30年 リフォーム 耐震」「外壁塗装 相場 ◯◯市」などのワードで情報収集します。こうしたニーズを確実に拾うには、SEOとMEOの両輪が欠かせません。
SEO(検索エンジン最適化)
- キーワード設計:地域名+工事内容(例:「横浜 マンションリフォーム」「札幌 屋根修理」)や、課題解決型ワード(例:「キッチン 狭い 解消」「老朽化 基礎補強」)を抽出し、ページタイトルや見出し、本文に適切に配置します。
- 施工事例・ブログの活用:ビフォーアフター写真、施工期間、使用建材、費用感などを明記した事例ページを蓄積。各事例にh2見出しを設定し、検索エンジンに認識されやすくします。
- 専門性・実績の可視化:建築士やインテリアコーディネーターなどの保有資格、メディア掲載、セミナー登壇歴などを明示し、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を高めましょう。
MEO(マップ検索最適化)
- Googleビジネスプロフィールの最適化:営業時間、施工対応エリア、サービスの特徴などを網羅的に登録し、写真や最新情報を頻繁に更新。
- 口コミ管理:良い口コミにはお礼を、悪い口コミには事実確認と誠意ある対応を返すことで信頼性を保ちます。
- 投稿機能の活用:イベント情報、施工事例、キャンペーンなどをGoogleマップ上で定期投稿すると、視認性が高まりアクセスにもつながります。
4. オンライン施策②:Webサイトと見積もり・問い合わせフォームの最適化
自社のWebサイトは、ブランドイメージを伝えると同時に、見込み客が問い合わせや見積もり依頼を行う重要な入り口です。特にリフォームは高額で工期も長くなることが多いため、信頼感と安心感を与える設計が求められます。
トップページでUSPと信頼性を伝える
- ファーストビュー(1スクロール目)で「得意分野」「実績」「問い合わせ方法」がひと目でわかる構成にする。
- 「創業◯年」「年間◯件の施工実績」「資格保有者数」など、数字を活用して信頼性を補強する。
フォーム設計の改善
- 入力項目はできる限り少なくし、ステップ形式(例:エリア選択 → 希望内容 → 連絡先)を導入することで離脱を防止。
- フォーム送信後には「24時間以内に担当者よりご連絡いたします」などのメッセージを表示し、次の行動への不安を解消。
施工事例・お客様の声を充実
- 写真だけでなく、「なぜこのリフォームを依頼したのか」「どのような課題があったのか」などのエピソードを含める。
- スタッフコメントや施工ポイントも加えることで、読者に安心感と親しみを与える。
よくある質問(FAQ)・コラムの設置
- 「リフォーム費用の目安」「ローンや補助金の使い方」「施工期間はどのくらい?」など、よくある質問を一覧化。
- 集客やSEOにも役立つ専門的なコラムを月1〜2本の頻度で追加し、専門性と更新性を保つ。
5. オンライン施策③:SNS・コンテンツマーケティングでファンを育成
リフォーム業は検討期間が長く、すぐに契約に至らないケースが多いため、見込み客との接点を継続的に保つ施策が重要です。SNSやコンテンツマーケティングを活用し、徐々に信頼を築いていくことで「いざ必要になったとき、第一候補に選ばれる」存在になることを目指しましょう。
Instagram・TikTokの活用
- ビフォーアフターの写真やインテリアの工夫など、視覚的に訴えるコンテンツを短尺で投稿。
- 「#中古リノベ」「#DIY好き」「#ペットと暮らす家」などの人気ハッシュタグを活用して拡散力を高めます。
YouTubeでの情報発信
- リフォームの工程紹介、職人やスタッフの紹介、ショールームツアーなどの動画を投稿。
- 視聴者に「この会社なら安心できそう」という親近感と信頼感を抱かせる内容が効果的です。
ブログ・コラムの定期更新
- 「和室を洋室にリフォームするメリット」「補助金を使ったバリアフリー改修」「収納リフォームで後悔しないポイント」など、悩み解決型コンテンツを中心に発信。
- 月2〜4本の更新頻度で情報発信を継続し、SEOと顧客ロイヤリティの両方を強化します。
メルマガ・LINE公式アカウントの運用
- 見込み客や過去の施主に向けて、施工事例やキャンペーン情報、完成見学会のお知らせなどを配信。
- 購読者限定の無料相談や特典を設けることで、情報を見てもらう動機付けが可能になります。
このように「今すぐ客」だけでなく「将来の見込み客」に向けた情報提供を行い、接触回数を積み重ねることで受注機会を増やしていきましょう。
6. 広告運用で新規問い合わせを加速させる
リフォームは高額な商材であるため、広告投資に対するリターンが見込める分野です。特に見積もり比較を前提とする顧客が多いため、広告を通じて「最初に見つけてもらう」ことが非常に重要です。
検索広告(Google広告/Microsoft広告)
- 「地域名+リフォーム」「築年数+リフォーム費用」「屋根 修理 料金」などの具体的なニーズに沿ったキーワードで出稿。
- 広告文には自社の強みや実績を盛り込み、遷移先のランディングページ(LP)とも内容を一致させてCVR(成約率)を高めます。
ポータルサイト・一括見積もりサイトの活用
- ホームプロ、リフォーム産業新聞、リショップナビなどの専門メディアに掲載。
- 競合も多いため、施工事例や口コミの質を高め、定期的にプロフィールを更新して上位表示を狙いましょう。
SNS広告(Instagram/Facebookなど)
- 年齢・地域・興味関心(住宅、DIY、インテリアなど)でターゲットを絞り、リフォーム前後の写真や動画で訴求。
- ビジュアル重視の広告形式(カルーセル、リール、ストーリーズなど)を活用し、まずは認知獲得を目的にした広告を配信。その後、リターゲティング広告で再接触を狙う二段階戦略が有効です。
広告は「今すぐリフォームしたい層」だけでなく、「いずれ検討したい層」との初期接点を築くためにも重要です。予算や成果を見ながら最適なチャネルを選定・改善していきましょう。
7. オフライン施策と地域密着戦略
デジタル施策が主流となる一方で、地域とのつながりを活かしたオフライン施策も、特に高齢者層やネットに不慣れな世代に対して大きな効果を発揮します。地元に根差した信頼関係の構築が、長期的なリピートや紹介につながるのです。
ポスティング・チラシの活用
- 地域のイベント情報やリフォーム事例を掲載した“読み物型チラシ”を定期的に配布。
- ビジュアルやレイアウトにこだわり、ビフォーアフター写真やお客様の声を掲載して信頼を訴求します。
- ポスティングだけでなく、商店街やスーパー、ドラッグストアなど人通りの多い場所に設置するのも効果的です。
地域イベント・セミナー開催
- 公民館やショールームなどで「耐震リフォーム相談会」や「中古物件購入+リフォームの基礎知識講座」などを開催。
- イベントは小規模でも問題ありません。むしろスタッフと直接話せる距離感が親近感を生み、後の相談につながりやすくなります。
- 地元の不動産会社や金融機関と連携し、住宅ローンや補助金制度の情報をセットで提供するのも有効です。
地元メディアの活用
- 地域新聞やフリーペーパーへの広告掲載や、施工事例やお客様インタビューを特集記事として扱ってもらう。
- ラジオ出演や地元テレビ番組への出演機会があれば、親近感と信頼度をさらに高められます。
地域密着型の施策は「顔の見える会社」という安心感につながり、口コミや紹介の連鎖を生むきっかけとなります。
8. モデルハウス・ショールーム活用と接客体験の向上
リフォームの特性上、「完成イメージが湧きづらい」「実際の仕上がりが不安」と感じる顧客は少なくありません。こうした課題を解決するためには、モデルハウスやショールームを活用した“体感型”の接客が有効です。
バーチャルショールームの導入
- 実物展示が難しい場合は、VRや3Dツールを活用したバーチャル見学を用意する。
- Webサイトやタブレット端末から、部屋の完成イメージを自由に見られる環境を整え、来店前の興味喚起にもつなげます。
実店舗ショールームの工夫
- 素材の違いや質感、設備の使い勝手を実際に体験できる空間を整備。
- スタッフが施工事例や費用感などを丁寧に説明し、疑問や不安に応える体制を整えます。
- 来場時にアンケートを取り、後日フォローコールやメール配信につなげることで、商談のきっかけを逃しません。
イベント・ワークショップの開催
- ミニDIY講座や「収納の工夫」セミナーなど、生活に役立つテーマでワークショップを企画。
- ショールームに足を運んでもらう理由づくりとして、イベントの定期開催を習慣化するのが理想です。
モデルハウスやショールームは“百聞は一見に如かず”の場として、顧客の購買意欲を後押しする重要な拠点です。来場から成約までの流れをシナリオ化し、感動体験として演出することが成功の鍵となります。
9. スタッフ教育と施工体制の強化
リフォームは顧客にとって「生活の場」を預ける大きな意思決定です。だからこそ、スタッフの対応力と施工品質がそのまま会社の信頼に直結します。社員全体のレベルアップが、クチコミや紹介、リピートにもつながる重要な施策となります。
接客・コミュニケーション研修
- 営業担当だけでなく、現場監督や職人にも「お客様対応」の基本を共有。
- 挨拶、説明の仕方、クレーム対応の基本などをロールプレイ形式で習得。
- 顧客の要望を正しく引き出すため、「相手の言葉を繰り返す」「図面や写真で視覚的に確認する」などの技術を教育します。
現場品質の徹底と管理体制
- 朝礼やミーティングでその日の作業内容と注意事項を全員で共有。
- 工事進捗はスマートフォンで写真管理し、社内共有および施主への報告に活用。
- 作業後の清掃や近隣挨拶など、現場外での配慮も品質の一部と位置づけます。
技術研修と資格取得支援
- 建築士、インテリアコーディネーター、福祉住環境コーディネーターなどの資格取得を支援。
- メーカーや業界団体が主催するセミナー・展示会にも積極参加を促し、最新の建材・設備・法改正に対応できる力を養います。
人材こそ最大の資産です。スタッフ一人ひとりのスキルと意識を底上げすることで、自然と現場の質が高まり、顧客からの信頼も積み重なっていきます。
10. KPI設定とダッシュボード運用
集客施策の効果を可視化し、的確な改善策を講じるためには、KPI(重要業績評価指標)を設定し、チームで共有・管理する体制が必要です。数値に基づくマネジメントを行うことで、施策の良し悪しをスピーディーに把握し、成功パターンの再現や失敗の早期是正につなげられます。
主なKPI項目例
- 問い合わせ数/見積もり依頼数(月単位での変動を把握)
- 見積もりから契約への転換率(営業力・提案内容の見直しに役立つ)
- 平均受注単価(高額案件やオプション提案の成功度を測定)
- 顧客満足度(アンケート評価や紹介率などをもとに評価)
ダッシュボードによる可視化と共有
- GoogleデータポータルやLooker StudioなどのBIツールを活用して、Webアクセス〜問い合わせ〜契約までのフローを可視化。
- チームごとに定例ミーティングを行い、KPIの達成度を確認しながら、課題のある数値に対して改善アクションをすぐに実行。
定量的な評価指標を持つことで、感覚だけに頼らない意思決定ができ、チーム全体の意識改革や目標の共有にもつながります。
11. 成功事例とポイント
成果を出しているリフォーム会社には、共通する取り組みや工夫があります。ここでは実際の成功事例から学べるポイントを紹介します。
事例A:地域イベント×SNSの融合
毎月、ショールームで「住まいの相談会」を開催。料理研究家を招いた体験型のイベントを実施し、参加者にキッチンリフォームの魅力を実感してもらう工夫を取り入れました。その様子をInstagramのストーリーズや投稿で発信した結果、イベント後の来場予約や問い合わせが増加し、年間契約数は前年比1.5倍に成長。
事例B:現場の透明性と信頼構築
施主に向けて「本日の現場進捗」をLINEで毎日写真付きでレポート送信。工程の見える化により不安を解消すると同時に、そのレポート内容をブログ記事として活用し、Web集客にも波及効果を持たせました。「安心して任せられる」という声が増え、紹介による受注が全体の25%を超えるまでに成長。
事例C:補助金・ローン情報を起点にリード獲得
中古マンション購入者向けに「リフォーム補助金・ローン活用ガイド」の小冊子を制作し、自社サイトから無料ダウンロードできるように設定。資料請求時にメールアドレスを取得し、後日メルマガやLINEで個別フォローを実施。検討段階から信頼関係を構築できるため、成約率が平均より20%以上高くなりました。
これらの事例に共通するのは、顧客との接点を工夫し、“体験”や“安心”をしっかり伝えること。そして、オンラインとオフラインを横断的に活用して継続的な接点を持つことで成果を伸ばしています。
12. 今後の展望とアクションプラン
リフォーム業界は今後、高齢化や空き家増加、環境意識の高まりといった社会背景を受けて、「住まいを再生する」ニーズがさらに拡大すると考えられます。リフォームは単なる修繕ではなく、価値の再創造であり、顧客のライフスタイルや人生設計に寄り添う重要な役割を担います。
一方で、建材や設備の進化、デザインの多様化、法制度の変化など、求められる対応力も年々高度化しています。これからの時代に選ばれる会社になるには、柔軟な発想と継続的な情報アップデートが欠かせません。
アクションプラン例:6か月の成長ステップ
- 【1か月目】:Googleビジネスプロフィールの整備、Webサイトの施工事例ページ改善
- 【2〜3か月目】:SNS運用スタート、補助金・ローン解説コンテンツの配信、リード獲得施策のテスト導入
- 【4〜6か月目】:地域イベント・セミナー開催、スタッフ研修、ショールームやモデルルームの見直し
このように段階を追って施策を展開しながら、KPIで数値管理を行い、成果の見える運営を進めていきましょう。
おわりに
リフォーム業は、顧客の暮らしをより良くする「未来提案型ビジネス」です。ただ商品を売るのではなく、暮らしの不安や不満を希望や安心へと変える仕事とも言えます。
本ガイドをヒントに、御社ならではの強みを見つけ、磨き続けてください。地域に根ざし、時代のニーズに応え続けるリフォーム会社として、持続的な成長を実現できることを願っています。