震災の原体験をきっかけに、学生たちの手で立ち上がった防災メディア『防災me』。
若者の防災意識を高めるため、あえて「ポイ活」や「会話形式の記事」など親しみやすさを大切にしているこの団体。
今回は、防災me代表の隂山さんと、運営メンバーの福田さんに、立ち上げの背景から現在の活動内容、そしてこれから目指す未来についてお伺いしました。
隂山さん:
私は福島県出身で、6歳の時に東日本大震災を経験しました。当時、父が建設業をしていて、震災後は除染や仮設住宅の工事で家にほとんどいなかったんです。その姿を見て、「災害って人の生活をこんなにも変えてしまうんだ」と感じたのが原体験になっています。
ただ、正直その後ずっと防災に関心があったわけではありません。実は、高校生までYouTuberとして情報発信をしていたんです。その経験から、「情報発信の力で社会に役立つことができるのでは」と思うようになり、たどり着いたのが“防災”でした。
隂山さん:
学生が発信することで、同じ若い世代にも届きやすいと考えたからです。また、スポンサーや行政に縛られない自由な発信を大事にしたいという想いもありました。企業からの広告収入や補助金に頼ってしまうと、「本当に伝えたいこと」が伝えられない可能性もあるので、できる限り中立でありたいんです。
福田さん:
現在はWebメディアを中心に、会話形式で読める記事を発信しています。学生が直接体験したことや、イベントレポート、防災グッズの紹介など、日常に寄り添った内容を扱っていて、「これは自分にも関係ある」と思ってもらえるような構成にしています。
隂山さん:
加えて、ポイント活動(いわゆる「ポイ活」)と連携した防災アプリの運営も行っております。ユーザーが記事を読むことでポイントを獲得できる仕組みを導入しており、防災に対する関心が高くない層に対しても、「お得に感じる」導線を設けることで、自然な形で防災意識の向上を促す工夫をしています。
福田さん:
防災というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、私たちの目的は、ポイ活×防災でそのイメージを和らげることです。最初はポイント目的でも全然OKです。記事が分かりやすくて面白ければ、「防災って意外と身近だな」と感じてもらえるはずです。ポイントを貯めるだけでも、自然と防災への意識が高まり、気づけば自分の生活にも役立つ情報を得られるようにつくっています。
隂山さん:
記事には、学生編集部メンバーの“吹き出し”コメントも入っていて、まるで会話しているような感覚で読めるんです。どんな人が書いているのかを知ってもらうことで、親近感を抱いてもらえればと思っています。
隂山さん:
やはり、印象的だったのは設立初日に福島のJヴィレッジで出展したイベントです。実際に被災された方々から直接お話を伺う中で、インターネットやメディアでは伝わりきらない「言葉の重み」を強く実感しました。現場でのリアルな声には、人の心を動かす力があると再認識させられました。
福田さん:
私自身もイベントを通じて、「自分たちがいかに知らなかったか」ということを痛感させられました。やはり現場に足を運び、直接体験することの重要性を改めて実感しています。
隂山さん:
資金面の課題は非常に大きいと感じています。現在は、私自身のアルバイトやインターンによる収入を主な財源として、団体の運営を行っております。学生主体・学生目線の柔軟な発想を大切にしたいという想いからこの体制を選択していますが、運営面においては正直なところ厳しさを伴っているのが実情です。
福田さん:
やはり防災についてもっともっと知ってもらいたいということがあり、アプリをさらに成長させていきたいと思ってます。学生だからこそ出せるアイディアを盛り込んでいきたいですね。
陰山さん:
一方で、アプリやメディアだけでなく、リアルなイベントも大事だと思っています。学生ならではの発想で出来るイベントもあると思ってますので。そのためにはお金など現実的な部分も考えなければならないですが、色々な方の協力があれば間違いなく実現できるはずです。「防災=堅いもの」といった従来のイメージを払拭し、より多くの方に自分ごととして捉えていただけるようなアプローチを目指しています。現在、防災はどうしても3月や9月といった特定の時期に注目が集まりやすいテーマですが、災害はいつ起こるか分からない以上、日常的に意識される状態をつくっていくことが重要だと考えています。「誰一人取り残さない新たな形の防災を作る」ことを軸に、これまでにない新たな形の防災のあり方を構築していくことが私たちの目標です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
学生ならではの視点と情熱で、防災というテーマに挑む『防災me』。
日常によりそいながら、防災を「自分ごと」として意識させる新しい試みが、これからの防災の在り方を変えるかもしれません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼防災me公式サイト
https://bousai.me/
学生編集部による最新記事も随時更新中!
▼防災me公式アプリ
https://apps.apple.com/jp/app/%E9%98%B2%E7%81%BDme/id6474128335
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
インタビューに答えていただいたのは…
防災me
代表 / 防災士
隂山 弘暉さん(写真左から2番目)
2023年3月11日にメディアを設立。福島出身の震災経験から防災に強い想いを持ち活動中。
広報メンバー
福田 晴之さん(写真左から1番目)