卵殻膜のアップサイクルで、新たなサスティナブル資源を世界に届けたい。

2024/09/27

ENEGGO株式会社は、本来なら捨てられてしまう卵殻と卵殻膜をリサイクルし、環境に優しい肥料を製造するユニークな企業です。今回、ENEGGO株式会社の佐藤 裕さんに、同社の成り立ちや製品の特徴、今後の展望についてお伺いしました。

卵殻膜から抽出されたアミノ酸を使った液体肥料「たまごの液肥オーガナブル」は、環境に配慮しつつも、植物の成長を促進する優れた効果を持っています。地域社会との連携や、世界市場への進出も視野に入れた同社の取り組みについて深掘りします。

ー最初にENEGGO(エネゴ)という社名の由来について教えてください。

ENEGGO株式会社(以下、ENEGGO)は2022年に代表の下(しも)が創業した会社です。エネゴという社名は、当社製品とも関係が深い2つの単語である「エネルギー(Energy)」と「エッグ(Egg)」を掛け合わせました。最後の「O」は卵の形を象徴しており、ロゴでもその形を活かしています。

ー本社の所在地が佐賀県ですが、地元とのつながりがあったのでしょうか?

ENEGGOの代表である下が佐賀県出身であり、ENEGGOの親会社である株式会社グリーンテクノ21も長年佐賀県で事業を行っており、佐賀県との縁が深いという理由から、ENEGGOの本社も佐賀に構えています。

ー新製品の「たまごの液肥 オーガナブル」の特徴について教えてください。

「たまごの液肥 オーガナブル」は、卵の薄膜である「卵殻膜」を原料にした液体肥料です。この卵殻膜には非常に多くのタンパク質が含まれており、そのタンパク質を弊社独自の技術により分解・抽出してアミノ酸として肥料に配合しています。このアミノ酸が土壌の微生物を活性化し、植物の根張りや成長を促進する効果があります。

ー卵殻膜は、最近化粧品などにも使われている注目の成分ですよね。卵殻膜を肥料にしようと思われたのは、なぜなんでしょうか?

当社の親会社でもある「グリーンテクノ21」は、20年以上前から卵の殻をアップサイクルした製品を製造販売しています。卵の殻から、学校などのグラウンドで使用する「ライン材」や野球のピッチャーが滑り止めなどで使うロジンバッグなど様々な製品をつくっているのですが、その中の一つの製品で「卵殻を原料とした壁紙」を開発しようとした際に豊富な栄養分をもっている卵殻膜が臭いの原因となってしまうことがわかり、殻と膜を分離する必要がありました。そこで、分離後の膜を使用した製品を検討しはじめたのが製品開発のきっかけです。

ー卵殻膜には植物にとっていい成分が含まれているんですか?

本来、植物は光合成によって、アミノ酸を合成して自分の生育に必要なたんぱく質を合成しています。実は卵殻膜の70%はたんぱく質でできており、当社では、これらの卵殻膜が含む豊富なたんぱく質を分解、抽出することで18種類のアミノ酸を豊富に含んだ液肥にしています。

当社の「オーガナブル」を使用した場合に、根の生育を促進し植物の根張りを良くします。

良質な根張りは、水や栄養の吸収能力がアップし、病害やストレスへの抵抗性などが向上します。

ー根張りが良くなると栄養や水の吸収が改善されるんですね。他にも特徴はありますか?

根張りが良くなることで化学肥料の使用量を抑えても、オーガナブルを用いることで同等以上の生育効果があることが確認されています。

日本では化学肥料の原料をほぼ100%海外に依存しているのですが、昨今の円高の影響でコストが上昇して利益を圧迫しているという現状があるようです。化学肥料の使用を抑制する一方で同等の効果を目指せるというのが当社の製品の大きな特徴であると考えています。

ー競合製品との違いは、環境に配慮したサスティナブルな製品であるという点が大きいのでしょうか?

そうですね。最大の特徴は、卵殻膜から抽出したアミノ酸を使っている点です。卵殻膜は他の肥料原料にはない成分を含んでおり、植物に直接アミノ酸を供給することで、エネルギー効率を高め、土壌や植物の健康に寄与します。また、卵の殻そのものもボトルに利用しており、環境配慮型の製品としても特徴があります。

また、当社はアップサイクルによるサスティナブルな社会を目指していますが、環境に配慮された商品であるという理由だけで買っていただけるとは思っていません。消費者にとって、当たり前に良い製品だから買ってもらえるという世界観を目指しています。

ー貴社製品のターゲットとなる市場についても教えて下さい。

現在は主に家庭園芸の市場をターゲットにしています。九州のホームセンターや園芸店での販売を中心に展開していますが、将来的には農業市場にも進出したいと考えています。まずは家庭園芸用で実績を作り、その後、農業市場向けに展開していく予定です。

現在は主に九州のホームセンターを中心に展開していますが、今後は全国展開を目指していきます。現時点でも海外からかなりの数、お問合せをいただいているので今後はアジア市場を中心に海外展開も進めていく予定です。

ーこの製品の開発に至った背景や、開発中の課題はありましたか?

卵殻膜が含む豊富な栄養成分は、当社製品の大きな特徴です。しかし、開発過程では栄養が豊富すぎて、液体肥料にするとカビが生えてしまうという課題がありました。発売まであと少し、というタイミングで発覚したため、社員総出で対応したことを覚えています。

また、世界でも前例がない製品※のため、かなりの試行錯誤を重ねてようやく解決策を見つけました。

※卵殻膜を用いた液体肥料として。(ENEGGO株式会社調べ)

御社の取り組みが地域社会や業界にどのように貢献しているか教えてください。

私たちの肥料は、化学肥料の使用量を減らし、同等以上の効果を発揮します。特に化学肥料の依存度が高い日本の農業において、私たちの製品が農家の経済的負担を軽減することができます。また、化学肥料の使用を減らすことで、長期的には土壌や作物の品質向上にも貢献できると考えています。

ー最後に、ユーザーへメッセージをお願いします。

私たちは、環境に良いだけでなく、実際に良い商品を提供することを大事にしています。環境製品だから価格が高いというのではなく、経済合理性を持った価格で広く使っていただきたいと考えています。卵殻膜という希少な素材を使った製品ですが、品質と価格のバランスを大切にしながら、皆さんに安心して使っていただける製品を提供していきたいと思っています。

お話をお伺いしたのは…

ENEGGO株式会社 佐藤 裕さん

ホテル業界に長年従事し、東京や宮古島などで経験を積んだ後、ENEGGO株式会社に転職。ベンチャー企業であるENEGGOの事業内容や画期的な製品、サービス業ではなく製造業としての新しいキャリアに魅力を感じENEGGOに参画。現在は広報を始めとした幅広い業務を担当している。

会社概要

社名ENEGGO株式会社
設立2022年2月17日
代表者代表取締役 下 浩史

事業内容

・卵由来の液体肥料の製造販売
・卵殻、卵白、卵殻膜、卵黄を活用した肥料製造販売
・持続可能な社会の実現を推進することに資する

事業所在地
本社:佐賀県佐賀市鍋島町大字蛎久1539-1
有田工場:佐賀県西松浦郡有田町赤坂丙2842-2

著者:muun 編集部

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